« 4/25S「魔王 JUVENILE REMIX」 | トップページ | 深見真「PSYCHO-PASS サイコパス 執行官 狡噛慎也 理想郷の猟犬」 »

北村薫「太宰治の辞書」

文学好きの女子大生と落語家の円紫師匠シリーズ、17年ぶりの最新作です。
清潔感溢れる文学少女だった≪私≫も、中学生の息子を持つ編集者になり
ました。いや、17年たったとはいえ時間飛びましたねえ(笑)。
編集者の女性が北村作品の主人公の小説と言えば「飲めば都」を比較的
最近読みましたが、あっちで結婚に至るまでの過程を書いているためか、
≪私≫についてはその辺りは多くは語られません。編集者として、一人の
本好きの女性として、文学に真摯に向き合う姿はかつてと変わらず。親友の
正ちゃんも結婚して今や≪私≫よりも大きな子を持つ母ですが、軽妙な
やりとりは相変わらずですね。

本作はこれまでの作品のように日常のミステリを解き明かすのではなく、「六の
宮の姫君」の延長戦のように、≪私≫が文学の謎を追っていくのがメインです。
題材は芥川の「花火」、太宰の「女生徒」。

どちらもも、私自身かつて読んだことのある小説ですが、そこはさすが心の
卒論師匠。改めて気づかされることばかりです。
「熊手のように闇を弾く花火」って表現、綺麗だなあ。それに太宰の「女生徒」に
元になった実際の女性の日記があったことはどこかで聞いたことあった気が
しますが、きちんと資料として残されていて、比較されているのも面白かった。
作家は一人称の告白らしい形を取った時よりも、虚構の中でこそ自己を語る、
というのも納得だわ。
それと、電子書籍が普及しつつある今、萩原朔太郎の本を通じて、紙の
手触りや紙質までも含めて本は色合いを変え、本を手に取るとはそういうこと
だという主張もまた、北村さんのものなんだろうなとも。

学生の頃とは環境も何も違う。そんな中にあって、水を飲むように本を読み、
デザートを楽しむように本を巡る謎を追う姿には、やはり憧れてしまいますね。

« 4/25S「魔王 JUVENILE REMIX」 | トップページ | 深見真「PSYCHO-PASS サイコパス 執行官 狡噛慎也 理想郷の猟犬」 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/101100/61499238

この記事へのトラックバック一覧です: 北村薫「太宰治の辞書」:

« 4/25S「魔王 JUVENILE REMIX」 | トップページ | 深見真「PSYCHO-PASS サイコパス 執行官 狡噛慎也 理想郷の猟犬」 »

最近のトラックバック