小野不由美「残穢」
映画化をきっかけに知った小野作品。ちょうど十二国記シリーズ短編と続けてに
なりました。でもこのタイトルの言葉や「虚妄」って単語、ちょっと十二国に出てき
そうな響きありますねえ。
語り手であるホラー小説家が自作のあとがきで募集した怪異体験に、手紙を
送ってきた女性。彼女から話を聞き、2人は彼女の住むマンションや、その
傍で同様に人の居着かない団地の先住人、それらが建てられる前にあった
工場や家のことを調べて行く。
執筆分野は大人向け小説が中心だが、嘗ては少女向けにラノベやホラーも
書いていたという「私」は、どう考えても小野不由美さんご本人のイメージです
よね。夫も小説家だそうですし!
物語自体は時系列で、関係者の話を聞いたりとドキュメンタリータッチで進んで
いくんですが、ホラー小説と言いつつ2人の前にどかん!と幽霊が出るわけでは
なく、ただ調べて行く過去の歴史の中で見つかる悲惨な事件や事故にじわじわ
怖さが沁み出てくる感じ。
人が土地に縛られていたかつての時代と違い、現代人は流動的に住処を変え
ていく。その人の行く先に、持っていた物に、建物の建材に感染して怪異を齎す
穢れの残りが残穢。
確かにお通夜に行って帰って来たらもらった塩でお清めするもんなあ。あれは
死という穢れは人に伝染して持ち帰られるという考え方からなんだろう。
延喜式の穢れの伝染の方式の話面白かった。
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