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小野不由美「丕緒の鳥」

十二国記シリーズの短編集。
今回主人公となるのは、長編作で物語を動かす慶王・陽子や延王・
尚隆ではなく、民の一番近くにあって王に仕える無名の下級国史達。

「丕緒の鳥」は慶王陽子登極の直前の話。式典の礼で的にされる
陶器の鳥を作る丕緒の、荒れた国、王への想い。新しい鳥を生み
出す気力を失った丕緒が思いだしたのは、亡き友人がかつて窓から
下界を見ては夢見ていた美しい堯天だった。その痛いほどの想いが
陽子に伝わったラスト。職を辞そうと考えていた丕緒も、これからも
王の為に鳥を作るし、こういう人が国に残ってくれたのは陽子にとって
も財産となる。そしてこの儀礼の描写が美しいから見て見たくなるよね。

「落照の獄」は、死刑を禁止した傾きゆく柳の話。司法をつかさどる
瑛庚は、更生の余地のない極悪人の処遇に悩む。罪を憎み死刑を望む
民衆の怒りと、死刑を一度許せば傾いた国に民の生殺与奪権を与える
ことになるのではないかという官吏としての不安の板挟み。瑛庚は自分
の決断の影響力を知っているからこそ苦しむんですよね。こうして善良
で真面目な官吏たちが精いっぱい考え苦しんでも、誰か一人の悪人が
いるわけじゃなくても、大きな傾きの流れに飲み込まれていくんだなあ。
そして死刑制度を鑑みるに、現代日本でも十分通じる重い話だと思う。

「青条の蘭」は、山木が石化する疫病の特効薬となる苗を、友人と数年
がかりで作った国史・標仲が、山木が枯死する前に新王へと届ける話。
小野不由美主上の構成力が光る作品だった。そもそもこの話、国名が
出てこない。山に密着した民の暮らしを思う友人や、極寒の悪路を王の
元へ駆ける標仲の頑張りを知る読者にとっては、「新王に届けるって
言っても誰?その価値を理解してくれる王様?」ってずっと不安で、こん
なに辛い思いしてる彼らの想いは報われるの?!間に合うの?って標仲と
一緒に焦りと絶望を感じながら読んでいるんだよね。
それが終盤でやっと「玄英宮まであと二日」で、標仲がいるのが雁であること
が明かされるわけですよ!「雁の新王!つまり尚隆!つまり勝訴!」。尚隆
なら絶対標仲の届けた苗の価値を理解してくれるもんね。だから、直接的に
苗、青条の蘭が尚隆に手渡された描写はない。ただラスト、標仲と共に苗を
作った興慶が木に黄色の実がなるのを見て、自分たちの想いが王に届いた
ことを知る―そしてその顔には涙を思わせる雪が…ってラスト!心憎いよ!
標仲の荷物を民が、標仲たちが石化した木を伐採して売りさばくことがどれ
だけ危険か説いたのにも関わらず、現状に向き合わなかった民が、標仲の
苗を引き継いで王の元へ届いて行くのも感動。

「風信」は、これまた慶王・陽子の登極前後の話。例の景麒に惚れちゃって
国中の女を追いだした予王によって家族を失った蓮花は、暦を作る官吏の
下で下働きをすることになる。国の情勢に目を向けずひたすらに暦を作る
彼らに蓮花は初め憤るが、戦に出ることも一つの道だが、残った人々の
日々の生活を正確な暦作りで支えることも一つの道なのだと知る。
うわー予王、見せしめのために女たちを匿った街を滅ぼすこともまでやって
たのか。

「青条の蘭」、良かったなあ。

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