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小林泰三「玩具修理者」

「アリス殺し」の小林泰三の中短編集。
収録は表題作の「玩具修理者」と「酔歩する男」の2作。

「玩具修理者」は「アリス殺し」でも感じたグロさの中に、命とは何かという
ホラーというよりSF的な会話があるのが面白い。個人的には玩具修理者
の存在より、背中に背負った弟がどんどん腐敗し姉自身も死に向かい
ながら、近所のおばさんや友人と会話して歩いていく様子が怖かったなあ。

「酔歩する男」は大好きなタイムリープ物。なんだけど、こんなに後味の
悪い、読み終わった後に頭がぐわんぐわん揺れるのって初めてだわ。
体ではなく意識が時間移動するタイムリープ物の大家は私にとっては
高畑京一郎の「タイム・リープ」とゲームの「シュタインズ・ゲート」で、
そこを頭に入れて読み進めていったんだけど、押し寄せる論理の波と
それと同じくらい曖昧模糊なふわふわした感触でなんというか気持ち
悪い…。
恋人の死を無かったことにするために、脳の一部に損傷を与えて時間の
流れを認識する機能を壊し、時間逆行を試みた男二人。
この話の恐ろしいところは、一度過去に戻ってしまうとその時点から先の
未来が全て不確定になってしまうことだ。波動関数の再発散ってやつね。
「タイム・リープ」は時間のパズルで同じ時間帯をもう一度認識すること
はないし、シュタゲは過去を変えた瞬間世界線が移動し、その因果律に
従った現在と未来が確定される。
でも、この「酔歩する男」ではそうした過去改変による因果律が一切未来へ
影響しない。毎夜眠りにつくと時間を跳躍し、眠る前と繋がらない日時へ
飛んでしまうが、その時までの行動の結果が繋がらないから、タイムリープ
物の最大の強みである「未来の記憶を持って過去に行って過去を変える」
ことを行っても未来は不確定である。
「タイム・リープ」で友人達に頼んだおまじないや、シュタゲで行ったDメール
の取り消しが未来に引き継がれないってことね。
つまり、何もできないし何も築けない。そして自殺しようとしても意識を失う
瞬間に時間移動するから死ぬこともできない。こうして胎児から老人までの
時間を永遠に跳躍し続けながら生きるしかない。
悲惨を超えた悲惨。怖いね…。

自分の足もとがふわふわぐらぐら揺らされるようなお話でした。

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