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書籍・雑誌

西澤保彦「神のロジック~次は誰の番ですか」

西澤保彦自体は、名作と名高い「7回死んだ男」もタックとタカチシリーズも
読んだことはあり、どれも一定の面白さは感じるのですが作家読みしたいと
思えるほどではなかった…という印象でした。結論として、その印象は
変わらないかも。キャラクターにあだ名をつけて呼ばせるのも頭に入って
来にくくて。

外国の全寮制の学校に集められた6人の子供たち。勉学や推理ワークショップ等の
不思議なプログラムに励みつつ、自分たちがなぜここに呼ばれたのかあれこれ
想像を巡らせる…
キャラでは妃殿下が好きでした!

今回の本はSNSで「衝撃の結末!」と評判で、実際思ってなかったラスト、
言われてみれば確かに!な伏線の張られ方でした…!

ちなみにタイトルは一度「神のロジック 人間のマジック」から改題されている
そうで、みんな言ってますがこれは明らかに前のタイトルの方がいいですね。
作中で出てきた母の宗教の話が作品全体の大きな伏線になっているんですが
そこにひっかけてある良いタイトルだなと。新しいタイトルの方は「次は
誰の番ですか」があまり意味がないし、なんか勝手にデスゲーム物だと思い
こんで途中まで読んでいたw

芦沢央「許されようとは思いません」


この方の御本は初めて読むかな?非常に読みやすかったし、
導入がどれも惹かれる構成で、なんか勝手に長編と思い込んで
たんですが、読んでみたらあっという間の5作の短編集でした。
どれもタイプが違ったミステリーで楽しめました。
特に良かった「姉のように」は、伏線とどんでん返しという
醍醐味が感じられたな。中身はとてもつらいけど。
因習村のような表題作「許されようとは思いません」も、胸糞の
悪さの中で恋人との結婚へと繋がる暖かく芯のある強さもあり
良かったです。
「目撃者はいなかった」の、会社で自分の失敗を自分で隠ぺいしよ
うとしてどんどん追い詰められていくのの胃がキリキリする感じ
わかりすぎたw

どれもラストで予想外の展開に連れていかれるお話で好みでした

三浦しをん「ののはな通信」

ミッション系女学校に通うののとはなの二人が交わす、教室で
密やかに回すメモ、明日も会うのに速達で送ってしまう手紙、
やがて時を経てメールでのやりとり等のみで綴られた物語。
無邪気にクラスメイトの些細な悪口や連載中の「日出処の天子」の
感想を語っていた少女時代から、互いへの想いが友情を超えた恋愛で
あることへの自覚、幸せな恋人時代から裏切り、破局。
外交官の妻、フリーライターという大人になって再びのメールでのやりとり。

二人の愛しくも辛い記憶が、砂漠の砂の底に眠る神殿のようにずっと
人生の芯となって二人を生かしていく。
燃えるような恋愛ではなく、互いに緩やかに繋がる相手を得た後も
自分にとって運命の相手はずっと心の中にあり続けるという。
どこかで「この二人は再会して再び恋愛関係へ」って流れにはなって
ほしくないなと思いながら読んでたな。
友情から始まり、恋愛に至って別離した彼女たちにとって、当時の
熱情を静かに砂の底に眠らせながら互いへの尊敬と思いやりで結ばれる
ことになったのは安心した。

対面しての会話ではなく、文字のやりとりだからこそ伝えらえる想いも
あるよね。日々の出来事に向けられた眼差しや深く自分を見つめる思考、
理想と現実、大人になることなど、様々な思い、言葉たち。
ラスト、はなが一人戦地に残り、ののが届く当てのない手紙を書く展開。
続きが気になりもするな。

藤崎翔「逆転美人」

今年はなるべく本を読もうと思って、新年早々本屋へGO!
ある事件に巻き込まれた美人過ぎるシングルマザーが、自慢やマウントではなく
自分の美貌のせいで被ってきた被害について反省を語った手記。
読んでいて感じる違和感。それが感じられる伏線はいくつもあったようだけど
私はシンプルに書き手の文章力の技量に少し疑問を持っていたかも。勿論
真相は見抜けなかったけどねw
似たギミックは見たことあっても、このレベルの規模でやったのは初めて
見たかも。大変だったろうな。

あとこれは作品の本筋には関係ないだろうけど、確かにルッキズムの
被害者である一面はあるだろうけど、年齢を重ねてもスマホ等の情報収集
手段を得ても全く成長しない主人公姿にイライラしてしまった…
容姿に関わらず、誰でも自分の得手不得手、短所を補う努力をしていく
ものだけど、この主人公があまりに何もせず自らの美貌による被害を
延々受けて学習もしないままだったので…。
そういうのを学べる環境に無かった、ということになってしまうのかな。

真保裕一「発火点」

超久しぶりの真保裕一作品。「ホワイトアウト」とか小役人シリーズとか
読んだなあ。

家族を捨てようとしていた父親、そんな父を家に引き留めるために
父の元同級生に居候を勧めた母子。行き場がなく、母子の思いに
気づきながらそれに乗っかった父の友人。
母子と父の友人のそれぞれの思惑、言葉にしないまでも共犯めいた
関係が、父を死に至らしめる。
父の友人が凶行に走った「発火点」は何だったのか・
この謎自体は魅力的なんだけど、なかなかそこに話が進まないのがなあ。

半分くらいまで主人公が自分の未熟さを過去や他人のせいにしたり
思いを寄せてくれた女性を傷つけたりで、反省したり逆に攻撃的に
なったりととにかくグダグダしてるシーンが続きます。
後半やっと父の過去と向き合うようになるので、そこの謎に向かって
テンポがよくなる感じかなあ。同時に、主人公も急成長します。
怪我させられた記者もびっくりの進化っぷり。
結局、母と父の友人は父の死後新しい共犯関係を結んだんだね。
自分の心を守るために。

最後のプロポーズ唐突感あるし、たぶん明記されてないけど相手は
靖代だと思うんだけど(藍子は夢を追ってそうなので)、靖代もまた
あの後に別の男と子を設けて、今はシングルマザーの時に主人公と
再会したってことなのかな。
再会した時の主人公の様子を今でも君は笑うけど、って書いてある
からには良好な関係築けてるんだと思うけど、そこかなり重要というか
あの別れ方からどうやってそこまで関係改善したんだ…。

でもマジ、主人公にとっての僥倖は靖代でも藍子でもなくシゲの
存在だと思う…。

中山七里「さよならドビュッシー」

これまた友人から送られてきて予備知識ZEROで読み始めたシリーズ。
てっきり「蜜蜂と遠雷」みたいにコンクール物?いとこの女の子と
ピアノや恋愛でライバルになったり?みたいに思ってたら、大火災と
そこからの主人公のリハビリ、そして遺産相続と狙われた命って
サスペンス&ミステリー展開へ。
このミスにも選ばれてた作品だったんだね。
序盤で登場して色々強い設定を持っていたルシアが早々に退場して
しまっていたので、なんかこの子出てこないのかなって思ってたら
という。
火事のシーンは遙視点だと火だるまになったルシアを確認した直後、
上から天井が落ちてくるんだけど、結局この時点ではほぼ無事だった
遙はこのときに死んで、ルシアの方がギリギリ生き残ったってわけ
なんだよね。しかし、骨格や体格もそっくりだったのかなこの二人。
演奏シーンのハラハラとラストの真相のハラハラがWでくるw

岬先生も素敵だけど、新条先生も素敵だね。

道尾 秀介「向日葵の咲かない夏」

名前は聞いたことあるけど、初めて読む作家さん。
小学生の主人公が学校を休んだクラスメイトの家へプリントを届けに行った先で
そのクラスメイトの死体を発見する。学校に戻って教師にそのことを伝え警察も
呼ばれたが、警察がその家を訪れた時には死体は消えていた。
そして、主人公の元に死んだはずのクラスメイトを名乗る蜘蛛が現れ、一緒に
彼を殺した犯人を捜すことに。

読んでても今あらすじ書いてても、蜘蛛が出てくる辺りで「んんん?」と
なりますねw
物語全体として薄気味悪い陰惨でじっとり湿った雰囲気が常に漂っていて、
主人公の家庭環境とか殺されたクラスメイトのS君の学校での環境とか、
近所の老人とか、担任の性癖とか、ただ物語の展開が暗いってだけじゃ
ないんだよね。

ある意味叙述モノともいえるけど、これなかなか気づけないよね。

有栖川有栖「インド倶楽部の謎」

久しぶりの火村シリーズの長編。結構前に買ったのを時間をかけて
ちょこちょこ読み進めておりました。

舞台は神戸。
インドでの前世を共有する<インド倶楽部>のメンバーが相次いで
殺される。その死は、運命の全てが記されたアガスティアの葉で
予言されていたのか―?

フーダニットとホワイダニットを行ったり来たりしつつも、いつもの
有栖川ミステリのようなガチガチの論理ミステリを期待していると
たぶんちょっと拍子抜けかも。
トリックらしいものもなく、犯人の決め手や動機もふんわりとしている。
(まあ、火村本人も自覚してたようなんだけど)
中盤で明かされるある過去の事件の方がドラマティックかもしれない。

でも長編だけあって、火村とアリスの綴る物語としてはさすがに面白いし、
何より私は火村たちを通じて示される有栖川先生の思想や考え方がとても
好きなんだなあと実感。
佐分利との対談で「凶悪事件の被害者は、前世で理不尽に人を殺している。
来世では救いがある」という因果応報説に声を震わせるほど怒りを見せた
アリスの肩を叩いて落ち着かせ、自分が代わって相手と対峙する火村先生は
かっこよすぎたな…!

あと、2人の役割分担や関係性について第三者が言及しているシーンが
多くて、面白かった。
出会って1時間そこそこで「ソウルメイト」「深く理解しあってる」って
言われたり、「謎を解くのは(火村)先生で、あんた(有栖川)が物語を
完成させるんかな」なんて言葉も。
個人的には火村も他者との同調や教官について「こういうのは有栖川の方が
得意なんです」って言ってたことも、へーってなった。やっぱそう思って
たんだな。
真犯人がアリスに告げた「有栖川だけはわかってくれるだろう?」という
言葉も気になるね。これ、つまり誰にも理解されることがないと思ってた
自分の行為を探り理解しようとする者が現れることの喜びをアリスが理解
してるからこそ、そのために火村の傍にいるんだろ?ってことなのかな。


前世、過去という自分には触れることもできない、変えることもできない
ものに振り回される人たちを見た後に、「やりたいことがあるから。それ
に向かっていくところだから」「来世は、明日です」と語る若い彼女の
言葉に、火村たちも読者も少し救われる気持ちになるね。

有栖川有栖「赤い月、廃駅の上に」

未読の有栖川ミステリ短編だ!とよく読まずに買ったら、怪談でした!
それもテーマは鉄道怪談という!
有栖川先生の怪談、めちゃ興味あるじゃないすか…

駅は異界への入り口、っていうもんね。一度駅から列車に乗ってしまったら
自ら降りることはできず、どこへ連れていかれるのかもわからない。

相変わらず、作者さんとキャラクターと読者の距離感がちょうど良くて、
文章に品があって、ミステリではないけど怪談としてのオチも面白かった
です。ちょっとずつ飽きずに読めるのも良かった。
怪談といっても、幻想小説のような話もあれば、妖怪のような化け物が
出てくるような話もあって、さまざま。
ほの暗く懐かしい幻想に囚われてしまう人をただ見送ってしまう「夢の国行き
列車」や熱帯の熱に囚われたように得体のしれない異国の果てへ引きずり
込まれるかのような「密林の奥へ」、わりと直球に異形の存在と遭遇して
しまう表題作などなど。
私は「夢の国行き列車」がなんか好きでした。有栖川先生、こういう怪談を
書くのか!って初っ端に一発食らう感じ。単純に幽霊が出たといかそういう
話じゃなくて、怪談とは言え地に足の着いた、でも少し奇妙なお話ってのが
なんか良くてね。世にも奇妙な物語とかで映像化しても面白そう。


高田郁「みをつくし料理帖」シリーズ

小関裕太くんの映画出演が決まってから少しずつ読み続けていた
「みをつくし料理帖」シリーズ、やっと最終巻まで辿りつきました。
長かったけど短編中編の連作だし読みやすかったです。
ほんともう次から次に澪やつる家には困難が降りかかるし又次さん
死んじゃうしなー。又次さんと澪が料理人トークしてるの好きだった
んだけどな。又次さんも後に入った政治さんも澪を女の料理人だから
ってバカにしないでいてくれるのも良かった。
でも最後は大団円で良かった!
澪は凄いよね。本当に吉原一の花魁を見受けしちゃうんだもん。
でも澪が目先の儲けや楽さに逃げずに、自分がやりたいことと目指す
こと(心星)を真摯に追い続けて、そんな澪の決断を暖かく見守る
周囲の人たちがいて。
何より澪の心星を澪以上によく知り見ていてくれていた源斎先生の
想いが報われてよかった~。澪が源斎先生の大きな愛情に包まれて
いたことを自覚するところ、二人が両思いながら気持ちを相手に伝え
られず飲み込んでしまうところ、夫婦になって欲しいと告白するところ、
みんな善きよな~!
リアルタイムで読んできた人は小松原様と澪と源斎先生の三角関係で
ヤキモキしたとは思うんだけど、私は全部知った後に源斎先生=小関
くんを思い浮かべながら読んでたので、完全に源斎先生派でしたw
いや源斎先生凄いよ澪はいい人を選んだよ。江戸時代に妻が医者の夫の
手伝いもせずに一人で女料理人として料理屋を切り盛りして子供もいない
って環境、当時はなかなか許されなかっただろうに、全部それが澪の
生きる道・心星だと理解して応援してくれるんだもん。
野江ちゃんも幸せになりそうで良かったし、澪と源斎先生の新婚いちゃ
いちゃもっと読みたい。小野寺家も穏やかな愛情で包まれた家族に囲まれ
てたし、最後に種市たちが澪の店に来てくれるところで涙ぐんでしまった。

最後の一文、「蒼天が遠景ごと、四人を抱きしめていた」っていうの
雲外蒼天の運命を持った澪の人生を現しているようで良かったなあ

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