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なんでもない日バンザイなつぶやき

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書籍・雑誌

湊かなえ「Nのために」

ドラマの好評は聞いていたのでいつか読みたいと思っていたのですが、
この正月にちょっと思いがけず時間ができたので一気読みしました。
とあるタワーマンションで暮らす夫妻の死亡事件について、その場に
居あわせた4人が語るというもの。勿論彼らが正直に全てを語って
いるというわけではなく…という、原作者お得意の型ですね。
ドラマ版と結末は違うのかかな?意外な真相というわけでもなく、4人
の心の向く先、つまりNのためにの意味が解き明かされていく話の
ように感じました。
そして彼らの想いは少しずつすれ違っているんですよね。
杉下は安藤のために、成瀬は杉下のために、西崎は奈央子のために。
安藤は杉下が好きで、杉下は結局安藤のことが好きだったのかな。
誰の想いも成就しないけど、みんな自分の大切なNのために行動した
という。
ラストは余命を宣告された杉下が成瀬と一緒に過ごすんだけど、杉下の
心はどこにあるのかな。高校時代に守った成瀬か、今回守った安藤か。

是枝裕和/佐野晶「三度目の殺人」

役所広司、福山雅治、広瀬すず出演映画の小説化。
二度目の殺人の罪を問われた三隅の弁護を行うことになった重盛。
三隅の供述に翻弄されながら、重盛は裁くこと、真相を追及することと
向かい合う。

とにかく三隅が捉えどころが無い。二転三転する供述もさることながら
愛想笑いを浮かべ恭順なようでいて空虚な器のように心根の芯が感じ
られないところが不気味ですよね。
そして、物語の結末として「真相」は語られない。咲江が手を下したのか、
咲江は教唆したにすぎないのか。どちらにしろ三隅は死刑になった。
咲江を救いたい三隅と、三隅を救いたい咲江。
重盛は自分の娘を不幸にした自身の経験から三隅の希望を採った。
それは三隅の死刑を選んだことであり、命を裁いたことでもあった。
それが「三度目の殺人」なのかな。

これはやっぱり重盛の物語なんだと思う。勝ちにこだわる弁護士として
真相に興味無く、法廷戦術を駆使することで生き抜いてきた重盛が
最後には「本当のことを教えてくれ」と強く望むようになる。
でもきっと本当のことなんてものは、「器」に誰の感情を注ぐかで変わって
しまうものなんだということもわかっていて、それでも真相を知りたいと
願うなら、きっと重盛は弁護士として人として変われたんだろうな。
娘との関係も改善しそう。

恩田陸「木漏れ日に泳ぐ魚」

恩田さんのお得意とするパターン、といいますか。
明日には別々の道を行くことになる男女二人が、とある男の死の真相について
語りあっていくうちに、お互いの関係性がまた全く違うものになっていくというもの。
複数の人間が集まってある人の死の真相についてひたすら語りあっていく形式
は恩田作品には多いんだけど、これは語りが男女2人だけだし、関係性もわりと
シンプルに恋愛関係(基本は)なので、わかりやすいっちゃわかりやすいし、これ
までの恩田さんのこの系統の作品の色々な部分を削ぎ落とした作品ともいえる
かな。
男の死については一応の真相とおぼしきものが提示されるんだけど、それも
またあくまで一晩の語りのうちからの推論であり、それが唯一の真実である
とも断定できない。

畠中恵「ぬしさまへ」

9月にミュージカル舞台で見た「しゃばけ」シリーズの1冊。松之助が主人公の
「空のビードロ」他、5品収録。
そう言えば、舞台版ではほぼ主人公の一太郎の出番が無かったからこうして
まともに動いて喋ってる様子を知ったのはこの原作でやっとかも。まあ、大抵
寝込んでたけど(笑)。あと仁吉も今回の舞台版には出てなかったから。
でも「虹を見し事」で、舞台でも見た「空のビードロ」の最後で長崎屋の奉公人に
なった松之助のその後の様子がちょっと見られて良かった。一太郎の方はそん
な風に思ってなさそうだけど、松之助はまだまだ遠慮がある感じだよね。続編
見るともっと兄弟っぽくなってるのかなあ。舞台でも植田くんの一太郎と平野くんの
松之助を見たいです。
お話としては綺麗にオチのついた「仁吉の思い人」が良かったな。

思った以上に若旦那体弱いのな!そして若かった17歳。とは言え当時の感覚なら
17歳ってもう成人だろうしね。頭も良いし気もいいし、体が弱いところ以外は将来性も
ありそうな一太郎だけど、「虹を見し事」の最後、甘やかされている自覚のある自分
とは言え、いつか店や奉公人達を背負えるようにできることをしたいという若々しい
悩みを持って、今後どう成長していくのかも気になるよね。

米澤穂信「満願」

やっぱり米澤さんは短編のが好みかも。些細な違和感から真相に繋がり
1つ1つがちゃんとミステリしてたし、丁寧かつ底がざらりとするような少し
だけ人間の裏のほの暗さを感じる6編。
「夜警」は新人警官の殉職を巡り上職にあった主人公は、美談とも称される
一件の裏に歪んだ動機を知る。実兄が語る「小心者なのに開き直ると度胸が
ある。そんな立派な死に方をするような奴じゃなかった」という人物像を聞き
当日起こったことを改めてなぞっていくと浮かび上がる、彼の思惑。
「死人宿」はかつての恋人との復縁を求めて訪れた温泉旅館で、自殺を
仄めかす手紙から該当者を探す話。前半のさらりとした一文が鍵。恋人の
ラストの言葉からももう彼女自身あの宿に馴染んでしまってるし戻る気なんて
なさそうなのも、ラストの村人の言葉からもわかる…。
「柘榴」は母の望みは知らず知らず2人の娘へ受け継がれていた。美人姉妹の
背徳的な画策、その中でも姉から妹への嫉妬による先制。どこまでも女な2人が
辿るであろう未来には破滅しかない気がする。どこか倒錯的なお話。たぶん
好きな人はめっちゃ好きになるやつこれ。
「万灯」は冒頭の「私は裁かれている」に戻るラストが効いている。海外で事業
展開に臨むビジネスマンが、直面した問題に対応するために取った行動が、
思わぬ形で自らを追い込んでいく。因果応報というか自業自得なんだけど、こう
持ってくるか!って驚きがあっていいね。
「関守」は都市伝説の記事を書くため訪れた取材先近くの店で、女主人から一帯で
起こり続ける事故の話を聞く。後半のじわじわ真綿で首を絞められているような、
でもその場から逃げることのできない感じと結末が、いい!世にも奇妙な物語とか
でやってみてほしいな。
「万願」は表題作。かつて世話になった下宿先のおかみさんのため、弁護士に
なった主人公が彼女の刑期後に事件を振り返る。彼女の願いは何だったのか、
守りたかったものがなんだったのかが鮮やかに浮かび上がる。

一色さゆり「神の値段」

またまた父親チョイスシリーズ。
人前に姿を見せない現代美術家と彼の作品の価値、ビジネス。
画廊のアシスタントである主人公が雇い主の死の謎を追う
アート・サスペンス。この第14回ミス大賞を受賞作。

トリックが、ミステリがというより現代美術の世界についてあまりに
私が知らなすぎて、ほーと唸ることしばしば。なぜ一枚の絵に対して
数十億の値がつくのか、そもそも価格と値段の違いとは何なのか。
チーム・バチスタが医療ミステリとしてシリーズしたように、学芸員
で画廊での勤務経験もあると言う作者はこういったアートサスペンスを
描いていくのかな。

貴志祐介「クリムゾンの迷宮」

所謂デスゲーム物が読みたくなって、ネットで「デスゲーム 小説」で検索して
探したら紹介されていたこの一冊。
言っちゃ悪いんだけど昨今のデスゲーム物の小説って設定の奇抜さありきで
文章イマイチな新人作家作品が多いなか、貴志さんはミステリーやホラーで
ヒット作多いし著作を読んだこともあるので安心してチョイスしました。
そしたらさすがだったー。先が気になって1日で読んでしまったよ。

自然と人間を相手にしたサバイバルホラーという感じかな。
デスゲーム設定としては必須な主催者側のチープなお遊び感と知識に基づく
サバイバル、後半のグロさ怖さ!食糧ルートを選んだ人達への罠がじわじわ
お腹が冷えてくるような主催者の底意地の悪さを感じさせて醜悪でしたわ。
主人公は頭もいいし観察力もあるし冷静さもあるけど運にも恵まれたね。
個人的には昔大好きだったゲームブックというモチーフが使われていたのも
良かった。このゲームブックに似せて行われるゲームと、アイテムやルートを
選択しつつ進めるのがいかにもなゲームっぽいんだけど、後半のグール関連
はホラーを書かれてきた貴志さんの得意分野らしさが活かされて緊張感あった
ぜ…。
藍が女流エロ漫画作家ってのも斬新で、まあ普通ヒロインに持ってこない職業
だねって感じ。読み手としてはまあなんかあるんだろうなとはわかりつつも、そこ
まで露骨な「やたら主人公に懐く守ってあげたい系女性」感が出てこなくて、
不思議な存在感を醸し出していました。
正直設定とオチはよくある感じというか、まあいま読んだからそう思うだけで
これ奥付見たら1999年だよ初版。バトロワとかもこの年じゃなかったっけ?
だからむしろこれはさきがけでむしろ後発のデスゲーム物の方がこの作品や
バトロワに影響受けてるんだと思うけど、まあ後発物と比べても力のある作家
が書くと似たような設定でも面白さが段違いだなって思いましたわ。

皆川博子「花闇」

移ろう退廃的な美しさを描かせたら右に出る者のいない皆川先生の時代小説。
本作のテーマは絶世の美貌と才気、そして妖艶極まる廃美で絶大な人気を
博しながら、病で四肢を切断しても舞台に立ち続けた、三代目澤村田之助。
彼の壮絶な人生を、弟子の役者であり付き人として彼に従い続けた市川三すじの
視点で描く。

江戸から明治へ時代が動く中で、死と性、濡れ場と責め場と殺し場といった過激な
一面を持つ歌舞伎が、田之助の死とともに、市川團十郎らが明治政府と共に進め
行く高尚で上品な演劇に塗り替えられていく。
まさしく、幕末の腐爛極まる江戸歌舞伎の最期に咲き、明治には生きられなかった
花であろう田之助の、芸にかける執念が凄まじい。
両足を失った田之助が更に手の指の痛みを感じたその瞬間の、信じられない
幽鬼でも見たような表情を見て、唐突に「ざまあみろ」という言葉が浮かんで
しまう三すじ。熱の薄い三すじが+の感情にしろ-の感情にしろ、突き動かされる
のは、いつだって田之助なんだな。

三すじもそうだけど、田之助もまたそして人々の憧憬を集め華やぐ芝居の絢爛
豪華な世界に魅せられ、芝居の世界でしか生きられない人間。その田之助が
周りの助けを得て四肢を失ってでも舞台立ち続ける姿は、前半の高慢でだから
こそ清々しく輝く田之助を知っているからこそ読んでて痛々しい。体が不自由で
あっても気だけは張って卑屈ではなかった彼が、遂に心折れてしまう瞬間が
辛い。
ただ、終章で現在の三すじが出会う田之助を騙る偽物の芸の先に、田之助が
執念をかけた残したものが受け継がれていくという希望が最後に残るのが救いかな。

桜木紫乃「凍原」

父親からのオススメ、桜木紫乃を読むぞのシリーズ。
珍しく副題で「北海道軽釧路方面本部刑事第一課・松崎比呂」と
シリーズ名のようなものがついています。
湿原に落ちたと思われる弟の失踪を受けて後に刑事になった女性が、
ある殺人事件の捜査を進めて行くうちに、被害者が追っていたある
女性の軌跡を追うことになる。

やはりこの作者が描きたいのは女の生き様なんだな。
第二次世界大戦末期に樺太引揚後、逃亡途中に出逢い殺したロシア人
兵士との子を同行者に預け、ホステスを経て魚屋の跡取り息子の妻に
おさまった長谷部キク。
そこで助手をしていた「さっちゃん」が彼女と入れ代わり、やがて染物で
名を馳せていく。
個人的には長谷部キクの人生、想いをもっと知りたかったな。最後に被害者
と主人公たちが辿りついたのは入れ替わった別人で、彼女には彼女の人生
があったとは思うんだけど、一人の男を見殺しに、一人の男をその手で殺し、
実の子を捨てて生きてきたキクの想いをもっと掘り下げてみて欲しかったな。
被害者が追っていたキクの人生が後追いする形で示され、「人間の証明」の
ような面白さがありました。

ただ、他でも言われてるけど真犯人の動機が読みにくい。あと先輩刑事は
結局惚れた女とその子可愛さに主人公のことを裏切っていたのがちょっと。

この人の小説は相変わらず冷たく湿った、決して明るく楽しい話ではない
んだけど、表現とか上手いなって思わされるがあって読み進めてしまうね。

東野圭吾「白銀ジャック」

久しぶりの東野作品です。一時期結構読んでて、「私が彼を殺した」
とか「どちらかが彼女を殺した」のようなガチミステリー系とか、「変身」や
「トキオ」のような感動シリアス系は結構読みました。
ドラマ・映像化した作品も多いですし、この「白銀ジャック」もどちらかと
いうとそういったエンターテイメント系のお話ですね。だってスキー場の
パトロール隊員が犯人を追って超スピードで滑るシーンなんて映像映え
すること間違いないですもんね。
事件の真相自体はあまり意外性はないのですが、さらっと読むには
良い感じですね。根津さんもてるのでは…?

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