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書籍・雑誌

桜木紫乃「凍原」

父親からのオススメ、桜木紫乃を読むぞのシリーズ。
珍しく副題で「北海道軽釧路方面本部刑事第一課・松崎比呂」と
シリーズ名のようなものがついています。
湿原に落ちたと思われる弟の失踪を受けて後に刑事になった女性が、
ある殺人事件の捜査を進めて行くうちに、被害者が追っていたある
女性の軌跡を追うことになる。

やはりこの作者が描きたいのは女の生き様なんだな。
第二次世界大戦末期に樺太引揚後、逃亡途中に出逢い殺したロシア人
兵士との子を同行者に預け、ホステスを経て魚屋の跡取り息子の妻に
おさまった長谷部キク。
そこで助手をしていた「さっちゃん」が彼女と入れ代わり、やがて染物で
名を馳せていく。
個人的には長谷部キクの人生、想いをもっと知りたかったな。最後に被害者
と主人公たちが辿りついたのは入れ替わった別人で、彼女には彼女の人生
があったとは思うんだけど、一人の男を見殺しに、一人の男をその手で殺し、
実の子を捨てて生きてきたキクの想いをもっと掘り下げてみて欲しかったな。
被害者が追っていたキクの人生が後追いする形で示され、「人間の証明」の
ような面白さがありました。

ただ、他でも言われてるけど真犯人の動機が読みにくい。あと先輩刑事は
結局惚れた女とその子可愛さに主人公のことを裏切っていたのがちょっと。

この人の小説は相変わらず冷たく湿った、決して明るく楽しい話ではない
んだけど、表現とか上手いなって思わされるがあって読み進めてしまうね。

東野圭吾「白銀ジャック」

久しぶりの東野作品です。一時期結構読んでて、「私が彼を殺した」
とか「どちらかが彼女を殺した」のようなガチミステリー系とか、「変身」や
「トキオ」のような感動シリアス系は結構読みました。
ドラマ・映像化した作品も多いですし、この「白銀ジャック」もどちらかと
いうとそういったエンターテイメント系のお話ですね。だってスキー場の
パトロール隊員が犯人を追って超スピードで滑るシーンなんて映像映え
すること間違いないですもんね。
事件の真相自体はあまり意外性はないのですが、さらっと読むには
良い感じですね。根津さんもてるのでは…?

知念実希人「時限病棟」

父親が「お前が好きそうな本だぞ!」ってくれた本なんですが、読んで
みると閉鎖空間に監禁されて命がけのリアル脱出ゲームをやるという、
いかにも私が好きそうな設定でした(笑)。

監禁された5人の男女に共通するある医師の自殺。ゲームの謎ときと
共に医師の自殺についての真相も次第に明らかになり、5人を集めた
真犯人の目的も明かされていく。
事件を外部から追う刑事たちが説明要因としているので、真犯人の正体は
察することができるんだけど、患者の正体とかはびっくりしましたね。

個人的にはせっかくリアル脱出ゲームなら読者にももっと推理、という
よりはパズルに近いですが、謎ときをさせて欲しかったです。あともっと
ぐいぐい面白い謎を出してきて欲しかった~!あとリアル脱出ゲームが
大好きだと言うヒロインが「リアル脱出ゲームではこういう場合~」とか
戦闘に立って謎ときを進めているのがちょっと面白かった…!

でも読みやすかったので、エンタメ本としては楽しめました。

拓未司「禁断のパンダ」

友人がくれた本。何とも不思議なタイトルですが、話を読み終えればその
意味もわかります。表紙イラストも可愛らしいですね。このミステリーが
すごい!大賞受賞作とのことです。
リーズナブルで美味しいフレンチを提供する料理人を主人公にした美食
ミステリ。と言っても別に料理人が推理して謎を解くわけではなく、もう
一人の主人公のような形で青山刑事の捜査と並行して物語は描かれます。
前半のほんわかムードと終盤の緊迫感に落差があって、ちょっと驚きます。

料理の描写が良くて、フランス料理が食べたくなる奴ですねえ、これは!
しかし終盤が結構アレなので、苦手な人は苦手でしょうし、このルートに
持ってきたか、という感じも正直ありますが。

桜木紫乃「星々たち」

初めての作家さん。
作者の出身地である北海道を舞台に、咲子、千春、やや子の母娘3代の
女性が歩む、薄暗い灰色の雲と重い積雪、淫靡な性と運命に振り回される
人生を、本人または他者からの視点による中編で描く。

自分では普段手に取らないタイプの作風でした。彼女たちの人生は、何かを
追い求めるわけでもまく、読者が何らかの答えに辿りつくわでけもなく、柳の
ように揺れる彼女たちの生きざまを、様々な立場の目で見つめて行く。
特にメインとなるのは千春ですが、たいして美人ではなく痩せていて、ただ
胸がはちきれんばかりに大きいっていう設定がね。あーわかる。男が「この
女なら手を出しても支障がない」って判断して、結果男が絶えないタイプだ
って感じ。そんな千春のことを近所のおばさんが、皮をむくまで腐っていること
がわからない玉葱に例えているのとか、女ならではの女の厭らしさ(性的な
意味ではなく)に敏感なとことか良かったです。
全体的に心理描写の上手い作家さんで、他にも「体は義務で心は体裁で動く」
とかの表現も好きでした。

決して明るい話はないし、彼女たちの歩む薄暗い人生は自業自得のところも
あるんですが、最後にやや子には救いが見えたね。

小林泰三「完全・犯罪」

「アリス殺し」「玩具修理者」と最近、小林泰三作品を読み進めてますが、
本作も含めて今のところどれもハズレなし!です。
彼独特の偏執的なロジックの海に溺れそう。

「完全・犯罪」は「酔歩する男」でもテーマになったタイムスリップ物。
あれを少しライトに薄めた感じかな。だからあそこまで複雑怪奇では
なく、あれですよ。ドラえもんで各時間ごとのドラえもんが大集合する
あの有名な話に近いかも。ところどころセルフツッコミが入るのが
ユーモラスだし力技のラストでした。でも、要所要所での論理展開は
さすがの説得力でしたね。
「ロイス殺し」はちょうどちょっと前にカーの「火刑法廷」を読んだので、
記憶鮮明だしとてもタイムリーでした。「火刑法廷」で語られたロイスの
言葉を膨らませて作られたお話なのですが、本家「火刑法廷」のある
人物に関わる世界観が具体的に描写されているので、うすら寒さを
感じる話ではありました。
「双生児」は本短編集の中で一番印象に残ったお話でした。幼い頃から
身の回りの物だけでなく、親達の呼び間違いを受け入れてきた事により
互いの「名前」すら共有してきた二人の姉妹。アイデンティティに疑問を
持った姉と一人の男性の出現。オチの底冷えする冷たい声かけもいいね。
結局二人の精神は互いの肉体を行き来していて、死んでもなお魂(精神)
が存在し続けている姉は妹の肉体に入って、もう行き気は出来なくなった
のかなあ。
「隠れ鬼」は序盤の、理由もわからずただ追いかけられている描写が
怖くて、ホラー作家たる作者の筆力を感じた。やっぱり自分は訳が
わからず人が恐ろしい目に合うことに恐怖を感じるのか、主人公が
追われる理由に(過去)気づけば後は結末が気になってしまうところ。
あんなスケール大きな話しになるとは思わなかったけど(笑)。
「ドッキリチューブ」はどこかで見た話だと思ったら、世にも奇妙な物語
の原作になった話しだったんですね。確かに世にもらしい、ブラックで
ユーモアがあって、かつシュールな話しだと思います。最後の最後で
納得してしまうあたりね。

小林泰三「玩具修理者」

「アリス殺し」の小林泰三の中短編集。
収録は表題作の「玩具修理者」と「酔歩する男」の2作。

「玩具修理者」は「アリス殺し」でも感じたグロさの中に、命とは何かという
ホラーというよりSF的な会話があるのが面白い。個人的には玩具修理者
の存在より、背中に背負った弟がどんどん腐敗し姉自身も死に向かい
ながら、近所のおばさんや友人と会話して歩いていく様子が怖かったなあ。

「酔歩する男」は大好きなタイムリープ物。なんだけど、こんなに後味の
悪い、読み終わった後に頭がぐわんぐわん揺れるのって初めてだわ。
体ではなく意識が時間移動するタイムリープ物の大家は私にとっては
高畑京一郎の「タイム・リープ」とゲームの「シュタインズ・ゲート」で、
そこを頭に入れて読み進めていったんだけど、押し寄せる論理の波と
それと同じくらい曖昧模糊なふわふわした感触でなんというか気持ち
悪い…。
恋人の死を無かったことにするために、脳の一部に損傷を与えて時間の
流れを認識する機能を壊し、時間逆行を試みた男二人。
この話の恐ろしいところは、一度過去に戻ってしまうとその時点から先の
未来が全て不確定になってしまうことだ。波動関数の再発散ってやつね。
「タイム・リープ」は時間のパズルで同じ時間帯をもう一度認識すること
はないし、シュタゲは過去を変えた瞬間世界線が移動し、その因果律に
従った現在と未来が確定される。
でも、この「酔歩する男」ではそうした過去改変による因果律が一切未来へ
影響しない。毎夜眠りにつくと時間を跳躍し、眠る前と繋がらない日時へ
飛んでしまうが、その時までの行動の結果が繋がらないから、タイムリープ
物の最大の強みである「未来の記憶を持って過去に行って過去を変える」
ことを行っても未来は不確定である。
「タイム・リープ」で友人達に頼んだおまじないや、シュタゲで行ったDメール
の取り消しが未来に引き継がれないってことね。
つまり、何もできないし何も築けない。そして自殺しようとしても意識を失う
瞬間に時間移動するから死ぬこともできない。こうして胎児から老人までの
時間を永遠に跳躍し続けながら生きるしかない。
悲惨を超えた悲惨。怖いね…。

自分の足もとがふわふわぐらぐら揺らされるようなお話でした。

恩田陸「訪問者」

久々の恩田作品。そして恩田作品らしい作品。
不審死を遂げた女主人の屋敷で暮らす老境の兄弟達。訪れる来客。
急死した映画監督の残したシナリオ。名も知れない相手からの警告の
手紙。死んだはずの女主人を見たと主張する少女。雷の夜と新たな死体。
閉じ込められた彼らによる謎を巡る会話が中心。
カリスマ性のある亡き女主人の館に家族が残って暮らす設定、他でも
あったよね確か。恩田作品にしては最後しっかり解答をだしてきてるけど
(普段はもっとふわっと曖昧に終わる)、別の可能性もまた秘められている
のだという余韻があっていいね。まあ、あっけなくもあったけどね。
っていうか、カメラマンの長田がいるかいないかわからない存在感だった
から「実はキーマン」キャラかと思ったよ。
途中から出てくる小野寺がいいキャラ。プライベートアクターという職業
を活かして、他の作品にも出て欲しいな。
っていうか、小野寺も「ドラマにもなった」って言ってたけど、これ土曜9時に
やってた「プライベート・アクトレス」だよね。原作は漫画なんだけどさ。
まさかここで話題に出るとはね。

ジョン・ディクスン・カー「火刑法廷」

殺人事件の裁判を扱ったノンフィクション作品で著名な作家ゴ-ダン・クロスの
原稿を預かった編集者のスティーブンスは、同封されていた資料を見て驚愕
する。
写真に写る19世紀にギロチンで処刑された毒殺魔マリー・ドブレーは、彼の
妻と同姓同名、容姿まで生き写しだったのだ。

この出だしからもう惹かれるよね。
カーの、というか翻訳ものの小説を読むの久々でなかなか手がつけられなかった
のだけど、読み始めると1章終わるごとに新たな謎が提示されてて先が気になり
すいすい読めてしまった!
某所で「最後まで犯人がわからない小説」として「アリス殺し」と一緒に紹介され
てたこの小説、あれがミステリ的にどうかと言えば意見が分かれるところですが
(ミステリ的な解決は提示されている)、私は最後のあの数ページぞくぞくした
なあ。密室殺人と死体消失といった純然たるミステリーと中世の魔女裁判といった
オカルト又はホラーの融合。面白かった!

小林泰三「アリス殺し」

不思議なお話だったー。
推理小説×ファンタジー?推理小説×SF?
現実世界の女子大生が体験する殺人事件と、彼女が夢で見る不思議の
国のアリスの世界での殺人(?)事件がリンクして、2つの世界の事件の
真犯人に迫って行くお話。

アリスの世界での会話がとっても「アリス」で(笑)。
あの言葉遊びを延々繰り返して本題に入らないやーつ。
それに思ったよりグロも多くて、特に序盤はなかなか読み進められなか
ったけど、現実世界とアリスの世界の人物関係なんかが見えてくると、
最後の展開には「あ!」となりました。
井森くん結構好きだったな。

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