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書籍・雑誌

梨「かわいそ笑」

ここ最近ずっとハマって読んでいるフェイクドキュメンタリー風小説。
QRコードが掲載されていて、そこだけ複製・無断転載可となっている
んだけど、読み込むとXの、たぶん作中で何度も名前が出てくるあの人へ
リプライが送られるようになってるのね、しかもご丁寧に本作タイトルを
リプする仕様。
これ、たぶん「かわいそうにしてあげないといけない」っていう主張に
繋がってるんだよね…?


本作は著者が集めた怪談が一つに繋がり、本作では読み手である読者側も
巻き込んでいく構成。突然こちらも当事者。怖ぁ。
2000年代前半のインターネット界隈でのやりとりを中心に、mixiやら
2ちゃんねるやら個人サイトやら、世代的に馴染んだ懐かしい世界で
繰り広げられた、ある特定の人物を呪う壮大な仕掛け。
考察サイトを読んで私もやっとぼんやりわかったかな。

清水 杜氏彦「うそつき、うそつき」

全国民が嘘発見器を内蔵した首輪を装着することを義務付けられた
ディストピア世界。無理に外そうとすれば首輪が締め付けられ死に
至る。
そんな世界で首輪解除を生業として生きる少年が主人公。
嘘をつくと点灯する赤ランプ。それを誤魔化すダミーランプ。
なるべく善人を救いたいという想いと、悪人なら敢えて見捨てることも
やむなしとする主人公が、本当に救いたい人ほど救えず、師匠、ピッピ、
仲介人、クールハース、サクラノたちの言葉の先に何を思ったのか。
ずっと他人の嘘に振り回され続けた人生だったんじゃないかな。
主人公の元に首輪除去を依頼に来るいろんな人の話がよかった

貴志祐介「天使の囀り」

前から読んでみたかった一冊。
この作者の本は随分前に「黒い家」を読んだきり。あれは人怖系
だったけど、本作は寄生虫怖、かな?

序盤にメールで語られるアマゾン探検の話や、そこで聞く土着の
風習とか怖れとかの話は怖かったかなあ。
風習とか昔からその地に伝わる土着の信仰って、ちゃんと科学的な
理由とかこれまでの歴史からの学びとかあるんだよね。
アマゾンから帰ってきた恋人の変貌と死、同様のことがアマゾン隊
メンバーにも起こっていると…。

途中までは人怖、終盤はグロかなあ。
実写で見てみたい気もするけど、厳しいかもね。倫理的な。
漫画ならいけるかな。

入間人間「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」

ネタバレして書きますけども。

これの肝って、主人公がまーちゃんと一緒に誘拐されたみーくんだ
と読者に思わせておいて、実は同じくその場にいた誘拐犯の息子の
方だったってことでいいんだよね?で、本物のみーくんは冒頭に
学校のシーンに出てきた菅原道真くんだったと。
まあ学校のシーンなんて序盤以外ほとんど出てこないから読者の
頭の中からは消え去ってるとはいえ、名前がみーくんになる以外の
伏線ってあったっけ…?
あと、結局現代で殺人事件を犯してるのは主人公なんだよね?

壊れてしまったまーちゃんが、本物出なくてもあの惨事を一緒に
体験した「みーくん」を求めるのはわかるんだけど、主人公に全然
感情移入できないまま終わってしまったなあ。

 

芦花公園「ほねがらみ」

少し前に読んだ「近畿地方のある場所について」に似てるかもしれない。
実話系怖い話を集めるのが趣味の主人公の医師のもとに、同僚や友人、先輩
から様々な話が寄せられる。バラバラに見えたそれぞれの話が実は繋がって
いて~という感じです。

土着信仰からキリスト教の話に繋がったりするのは少し壮大になって
しまったなという印象はあったけど、定番だけど一文字で埋め尽くされた
ページとか、骨折してしまいそうな動きとかは怖かったな。
でもモキュメンタリ―的な部分を期待してたから、現実に即した怖さと
いう意味では近畿地方の方が怖かったかも。あれは旅先のホテルで一人で
読んだから怖さもひとしおだったけども!

荒木あかね「ちぎれた鎖と光の切れ端」

あ~孤島ミステリ物、そんで語り手が…のパターンね!と最近よく読んだ
傾向の設定だったのであまり期待せず読み進めたんですが、いい意味で
裏切られたなあ。
読んでる途中から「あ、これ面白いな」って感じられたの久しぶりかも。
トリックがとかキャラがというより、1部、2部と読み進めていくとわかる
全体の構成の伏線や、連続殺人をテーマにした孤島ミステリなのに希望の
見える終わり方がとてもよかった。
1部で失われたものはもう取り返しがつかないし、犯人と対峙した時に
主人公の胸によぎる切なさがある。
でも未来に救いもまたあるんだよね。

ただ、主人公が先輩のことそんなに復讐するほど好きだったん?って
のはちょっとあるけどね笑

これまで読んでたようなやつだと、主人公と変り者の九条が探偵役になって
連続殺人の謎を解いていく感じ?なんだろうけど、殺人のテンポとスピードが
速くて、まだ本の真ん中くらいのページなのに、ほぼほぼみんな死んだ?と
なったら、実は…という。全て理解した上でまだ1部を読み直したくなる
完成度の高さでしたわ。
2部の主人公や女刑事が語る九州や職場での男尊女卑の話は令和ならでは
だなとも。ちなみに女刑事のハンドクリームの匂いがやたら強調されてたので
オチでこの匂いきっかけで実は黒幕だとバレるみたいな展開になるのかと勝手に
予想してたんですが全然違いましたね。

真藤順丈「ジョジョの奇妙な冒険 無限の王」

ジョジョのスピンオフ小説は今まで読んだことなかったけど
今回はリサリサ先生がメイン、時期的にも波紋とスタンド、
二部と三部の狭間期とも言える1970年代から80年代あたり。
てっきりリサリサは2部以降、再婚して戦闘とは離れて隠居して
暮らしてるのかと思いきや、再婚した夫と死に別れた後はまた
SPW財団の顧問として活動していたんだなあ。
そりゃ、ジョセフも気が気じゃないよね。

リサリサの弟子でジョセフやシーザーにも師範代として指導した
ロギンズ&メッシーナの子孫がSPW財団で波紋使いとしてリサリサの
護衛と調査官を務めてるの、やっぱり2部からの繋がりとして
嬉しかったし、波紋とスタンドが両方使えるのはジョセフしかいない
と思ってたからそのメッシーナの孫のサーシャが同じく波紋と
スタンド両方使えるのにもびっくりした。
っていうかリサリサもなってた。
何より、最終章で齢100歳にもなろうかというリサリサがそれでも
まだ自分にはやることがあると前線に立ち続けるのは、かつて自分より
若い者たちにリスクを押し付けて自分は前線から遠ざかって、彼らを
致命的な運命の結果に追いやってしまったという想いがあったから。
そしてそこで最後に挙げられたシーザー・A・ツェペリの名に深い
後悔が感じられたな。

オリジナルキャラクターの造形や心理、時代背景もしっかり描かれていて
説得力のある話だった。
リサリサ先生も2部の超然とした姿の印象が強かったけど、いや本作でも
すっごい人なんだけど、もっと内面が描かれた分、人間味が増した
感じがしたよ。まさかリサリサ先生も最後スタンド発動するとは思わなかった
よ!ハウスオブアースだっけ。直接触れないと波紋を流し込めないという
波紋使いの問題点を、波紋の風を送り込むというやり方で解決したという
意味で、波紋使いの最高点にリサリサは達したのかもしれないなあ

方丈貴恵「孤島の来訪者」

これまた予備知識無くて面白いミステリー物として紹介されていて
図書館で読んでみた一冊。作者さんも初めての方。
本作だけでも読めるけど、シリーズものになってたみたい。

幼馴染を殺された復讐のためTV番組のロケスタッフとして幽世島へ
乗り込んだ主人公は、計画に先んじて標的を何者かに殺されてしまう。
彼らを狙うのは、異界からやってきたマレヒトという存在で…
いや~また「特殊設定ミステリー」だった笑!

今回結構ガッツリとルール設定があるので、特殊設定をそういうルールの
世界という前提でミステリーとして推理をしていく感じです。読者への
挑戦も挿入されている本格仕様ですぞ。
ルールの細かさ(縛り)がマレヒトも主人公達をも雁字搦めにして、途中で
わけがわからなくなったりもしましたが、個人的にはこのマレヒトという
存在とそれを封じてきた村の因習村的な背景も楽しかったです。

米澤穂信「黒牢城」

Xでおススメのミステリとして流れてきて、ほぼ何も考えずに図書館で
予約してしまった本作。勿論、作者の米澤穂信さんの本は何冊も読んで
て好きな作家だったので間違いはないだろうなと思ってたけど、まさかね。
こんな切り口のミステリだったとは。

一言で言うと籠城中の荒木村重が領内で起こった不可思議な事件を、自分が
土牢に捕らえた黒田官兵衛に語ってきかせ、黒田官兵衛が安楽椅子探偵よろ
しくその謎を解くという。
ぶっとび設定だよね。おもろー!ってなった。
織田信長に謀反を起こして籠城中の荒木村重が主人公ってだけでも面白いのに
(正直、荒木村重についても大河ドラマなどで多少見知ってるくらいで、
あまり詳しくなかった)、名軍師と名高い黒田官兵衛が探偵役だよ。
どっからでてくるのこの発想。
中編で構成されてて、物語の進行とともに、荒木村重や有岡城、摂津を取り巻く
情勢も変化していく。
個々の奇妙な事件もさることながら、なぜ囚われの黒田官兵衛が荒木村重の
持ちかけた問題の解決に協力するのか、それにより荒木村重の謀反はどう
なったのかなど歴史ものとしてもとても面白かった。
荒木村重の謀反が成功してないことと黒田官兵衛が助けられたことは知って
たけど、詳細思わず読了後にWIKIで調べちゃったよ。それくらい面白かった
そして私はずっと大河ドラマ「秀吉」の頃から竹中半兵衛派です笑

 

今村昌弘「屍人荘の殺人」

大学のミステリ愛好会の探偵気取りの変り者の先輩。
ワトソン役を自認する語り手の後輩の男子学生。
彼らが招かれる映画同好会のペンションでの合宿…
何やら過去に曰くがありそうな個性的な登場人物たち

導入は私たちがよく馴染んだテイストです。

ペンションをクローズドサークルにせしめた設定こそ特殊ファンタジー
要素があるものの、そのルール下で起こった殺人事件については
きちんと論理的で、ちゃんとミステリーしてるって感じ。
ミステリーとしての部分とこの特殊設定故に彼らに迫った危機感が
いいバランスで両立してて読みやすく面白かったです。
しかし明智さんは何だったんだ…

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